少女庭国 / 矢部嵩

レビューという名の感想文です。


卒業式に向かっていたのに、いつの間にか石の部屋に閉じ込められてしまった女の子達のお話です。
脱出するには卒業試験を終えなきゃいけなくて、それは、自分以外生きていてはいけないという条件で、女子高生たちがどのように行動していくかとなっています。
表題作品自体は、閉じ込められ系ホラーで、女子高生がワイワイしている感じで楽しいです。
ところどころ、妙にクールすぎる部分が出てきたりしますが。
それより、ほんの半分以上を占める補遺の部分がすごく面白い。
番号付けされて名前とそのエピソードが綴られていて、当初は隣の部屋の子をさくっと殺して終了だったのが、先に進むと集団形成したり、開拓したり、入植したり、自治したり、街を作ったり、畑作ったりと壮大になっていきます。
部屋は一方通行になっており、扉が2枚、片方にのみ取っ手あり、その扉を開けると、同じ部屋が存在し、そこに女の子が一人寝ているという状況が延々と続く世界です。
扉を開くと、寝ている女の子が動き出すので、取っ手のある側を未来、無い側を過去として、補遺は語られています。
開拓や文明の発展が成功した組は概ね過去への開拓も行って、そこにはそれ以前の卒業生たち(補遺の中では番号の若い方になるのかな)の跡が残っています。
卒業生が目覚める条件は、その女の子いる部屋の過去方向の扉が開くということだけ、明示されていたんですが、過去方向の部屋で卒業試験が終了した場合についても目覚めるんだろうなとは思いました。
一応レーベルがSFだったので、そのつもりで読み始めたら、あれ?ホラー?という感じだったのですが、補遺でSFになりましたね。
なかなかに面白かったです。