肉食屋敷 / 小林泰三

肉食屋敷 (角川ホラー文庫)

肉食屋敷 (角川ホラー文庫)

レビューという名の感想文です。


ジャンルの違う4種類の短編小説が詰まっています。
1つ目は表題の「肉食屋敷」で、SFホラーというかコズミックホラー。
ジュラシックパーク的に古代生物を復活させたつもりが、宇宙人を復活させていたいう話です。
宇宙人というか、旧支配者ですね。
「千の仔をはらんでいる」というセリフがあるので、シュブ=ニグラスが元ネタかと。
最後のオチも良かったです。
2つ目は「ジャンク」で西部劇
ゾンビ話ですね。
ライトノベル的展開にも思えますが、一筋縄でいかないのがこの作者の面白いところ。
人体をリサイクルするっていう世界システムは面白いデス。
そして主人公は実は…っていう、作者定番のオチではあるんですが、結構やられました。
3つ目は「妻への三通の告白」で、サイコホラーです。
タイトルからある程度の話の枠は検討がついていましたが、でもやられたっていうところでしょうか。
現在から過去に進んでいるはずなのに、すでに過去に壊れていたとかなんとか。
4つ目は「獣の記憶」でミステリー・ホラーというところでしょうか。
多重人格の殺人者の話…っぽいけど、そうでは無いのが面白い。
最初の「マスキング効果」がオチにはられた伏線だとは思いもよらなかった。
これは本当にやられたと思いました。
殺人事件が発生した時に、12時に家を出て、1時を過ぎて病院に居たのに、1時に大騒ぎしているという大家のクレームからちょっと違和感を感じて居たら、やっぱりそこはおかしいということで、犯人の穴になってたみたいです。
ただ、犯人の想定はさっぱり出来ませんでした。
ある意味、叙述トリックに近いのかな?
東野圭吾の「ある閉ざされた雪の山荘で」みたいな感じで。


ともかく面白かったです。
引きこまれて先を先をという感じで読んでいきました。
オチで一気にひっくり返すというパターンは非常に大好きです。
やられた!っていうのが、爽快というかなんというか、読後感をスッキリさせてくれます。
非常に堪能出来ました。