十年交差点 / 中田永一 / 白河三兎 / 岡崎琢磨 / 原田ひ香 / 畠中恵

 

十年交差点 (新潮文庫nex)

十年交差点 (新潮文庫nex)

 

 

「十年」をテーマにしたアンソロジーです。

一番のお気に入りは、最初の掲載作品である、中田永一さんの「地球に磔にされた男」ですね。タイムトラベル系SFです。十年前にタイムワープし即座に十年後、すなわち今に戻ってくるというタイムトラベルの話です。

十年前に飛ぶと宇宙空間に放り出されてしまう、過去に飛んだ時点で現代の歴史は変化してしまう、という設定がかなり良いです。この設定により新しい世界に飛びまくって人生を見つめ直していくという短編になります。

二編目は十年後の夢について葛藤する中学生とそれをなんとかしようと奮闘する担任の話、白河三兎さん「白紙」。担任の先生たちは奮闘しますがちょっとズレがでて結局は…という感じで、なんとも救われない最後です。

三編目はターナー症候群の女性とその恋人の話、岡崎琢磨さん「ひとつ、ふたつ」。主人公の女性はハンドメイドアクセサリのお店をやっていて、プロポーズしてくれた彼氏ががいるが、とりあえず保留し、ずっと悩み続けていきます。そのときに来たお客さんがきっかけで思考の方向性が変わっていきます。こちらはハッピーエンドという感じでしょうか。

四編目は亡くなった姉の子供に執着を持ってしまった女性の話、原田ひ香さん「君が忘れたとしても」。姉の子供は主人公にべったりだったのを、義兄が再婚したことにより離れ離れになり、連絡もなくなり忘れてしまったのだろうと思ったら…。いいお話でした。

最後の五編目は河童の話、畠中恵さん「一つ足りない」。これだけ時間としての十年が関わって来なかった気がします。ですので、なんか違うなぁという感じでした。時間経過そのものは「白紙」の方でも無かったわけですが、ヤクザ物的な感じで、河童&川vs人間&猿の話でした。

全体的には面白かったです。「一つ足りない」だけ残念かなという感じですね。「地球に磔にされた男」が非常に面白かったので、このままのノリで行くのかなと思ったら、ほんとに「十年」というくくりだけで、カテゴリもごった煮というのもある意味面白かったです。